大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1106号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人竹上半三郎の上告趣意第一點同第二點について。

本件において、被告人が火を放った所論便所は、劇場建物の東側に接着するものであることは、原判決の確定するところであり,原判決の舉示する證據、殊に強制處分における判事の檢證調書の記載、同調書添付の圖面によれば、右便所は右劇場に接着して建設せられ、右劇場の一部をなすものであることがわかる。しかして、被告人が本件犯行にあたり、右便所を燒燬する意思のあったことは、原判決舉示の證據上明瞭であるから、これにもとずいて、原判決が、被告人は本件劇場に放火しようと考えた旨判示したのは、相當である。また、右劇場には、人が寝泊りしていることを被告人が知っていたこと、及び、放火の結果、既に獨立燃燒の程度に達する燒燬のあったことも、右證據に照してあきらかであるから、原判決が、被告人の右の所爲に對して、刑法第一〇八條の既遂罪をもって、問擬したのは正當であって、この點を非難する論旨は理由がない。

また、右便所は劇場の一部であることは、前説明のとおりであるから原判決が、被告人が「紙屑入りの炭俵を同便所南側羽目板に立てかけて、」放火のしかけをしたことを目して、「建物全部に燃え移るように仕做した」ものと説示したのは、これまた、相當であって、所論のように、證據によらずして、事実を認定したものということはできない。論旨はすべて理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって、刑訴施行法第二條、舊刑訴法第四四六條に從い、主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例